地獄は存在しますかシリーズ(3)ヘブライ語sheolには死や墓など死後の場所という意味がある
多くのキリスト教会は、人が死んだ後行く陰府あるいは地獄があると教えています。彼らは聖書の教えが地獄を教えていると考えています。今回は、新共同訳聖書で多くの場合、陰府あるいは地獄と訳されているヘブライ語シェオルSheolという語がどういう意味か、ヘブライ語聖書の用語索引から説明したいと思います。
(1)陰府から魂が救われる場合がある
新共同訳の箴言には、「鞭打てば、彼の魂を陰府から救うことになる。」という言葉があります。(箴言23:14新共同訳)New American Standard Bibleでは、同じ聖句が、”You shall strike him with the rod And rescue his soul from Sheol. “となっています。ですから、陰府という語は英語ではSheolと訳される場合があります。
ですから、人の魂を陰府あるいはシェオルから救うことができる場合があります。それは、当然火の燃える地獄で苦しんでいる状況から助け出せるという意味ではないでしょう。
また、それは、子供が死んだ後に救われるということではありません。鞭を受けて子供に教訓を学ばせることによって、子供が生きている間に陰府、すなわち死を避けるように救うことができる場合があるという意味です。
もし、陰府が永遠の責め苦を与える地獄を意味するのであれば、そこから救うことはできないのではないでしょうか。しかし、陰府とはそのような意味ではありません。
陰府とは単に死を意味しています。たとえば、子供が殺人をしたり、淫行をしたりする傾向がある場合、鞭で懲らしめたり、厳しく諭すことによって、その傾向を改めることができるかもしれません。そのようにして、子供が刑務所に行って死刑になったり、淫行のために性病で死んだりする結果から救い出すことができるという意味です。
子供を鞭などで懲らしめることによって陰府から救い出せるという聖書の言葉がある
これは単に死なないように予防することができるという意味
私たちは鞭を受けて教訓を学ぶことにより、滅びに至る生き方を変化させて、できるだけ陰府すなわち死から遠ざかっていることができます。
(2)新共同訳で陰府と訳されている原語はヘブライ語シェオルで墓とも訳せる
詩編の中でも、「命ある人間で、死を見ないものがあるでしょうか。陰府の手から魂を救い出せるものがひとりでもあるでしょうか。 」と述べられています。(詩編89:48新共同訳)ですから、この聖句では、すべての人間が陰府に行くと述べられています。
これは、NASBでは、”What man can live and not see death? Can he deliver his soul from the power of Sheol? “となっています。(Psamls89:48)新共同訳で陰府と訳されている語は、NASBでは、Sheolとなっています。
新共同訳でも、ここでは、死と陰府が並列におかれています。NASBの詩編でも、シェオルと死が並列に置かれています。聖書ではその意味を明快にするために、語を並列に置かれている場合があります。ですから、ここでも陰府すなわちsheolと死は同じ意味です。
確かに、BibleHubによると、ヘブライ語シェオルを27冊の英語聖書がほとんどが英語のsheolと音訳するかgraveと訳すかしています。また、Brenton Septuagint Translationでは、 Hades と訳しています。Hadesとは、ヘブライ語のシェオルのギリシャ語の代替語です。しかし、Douay-Rheims Bibleという英語聖書だけがhellと訳しています。
新共同訳で陰府と訳されている語はヘブライ語聖書では、שְׁא֣וֹל
(šə・’ō・wl) となつています。そして、BibleHubのストロングの聖書用語索引では、Strong's Hebrew 7585で”Underworld (place to which people descend at death)” となっています。
ですから、ヘブライ語のシェオルは火の燃える地獄という概念が含まれていないで、ただ単に人々が死の際にくだっていく場所、ある場合、単に墓と訳せることを多くの聖書翻訳者は認めています。
さらに、詩編89編48節では、すべての人がシェオルに行くと述べています。ですから、Douay-Rheims Bible のように、シェオルをhellと訳してしまうと、正しい者も正しくない者も火の燃える地獄に行くという意味になってしまいます。これは、明らかに公正なことではなく真実の聖書の教えではないでしょう。ですから、シェオルをhellと訳すのは誤訳と言えます。
もし聖書の教えに従う人々も皆・・・
陰府すなわち地獄から救い出されないとすればそれは公正なことではありません
陰府から救い出される人がいないとは単に誰もが死ぬという意味ではないですか
ですから、一部の聖書がhellと訳しており、新共同訳も地獄という意味もある陰府という語で訳しているために、聖書読者の中には、聖書の教えに火の燃える地獄という概念があると誤解をすることになります。
ですから、詩編89編48節にあるように、現状ではすべての人が最後に死ななければならない状況にあります。ですから、ある場合は、シェオルを死と同じように理解しても間違いではないでしょう。
(3)詩編の他の聖句でも陰府はシェオルもしくは墓という死後の場所を意味する
新共同訳の詩編の他の聖句では、「死の国へ行けば、だれもあなたの名を唱えず陰府に入ればだれもあなたに感謝をささげません。」という聖句があります。(詩編6:6新共同訳)ですから、ここでは、陰府が「死の国」と同列に置かれています。
同じ聖句を新アメリカ標準訳聖書(New American Standard Bible)では、“For there is nomention of You in death; In Sheol who will give You thanks? “と訳されています。(Psamls6:5NASB)
新国際訳(New International Version)では、”Among the dead no one proclaims your name. Who praises you from the grave? “と訳出しています。(Psamls6:5NIV)
ですから、詩編6編6節で新共同訳で陰府と訳されている語は、NASBでは、Sheol、NIVでは、the grave、つまり墓と訳されています。この詩編6編6節では、陰府では、神の名を唱えたり、神に感謝をささげたりできません。反対に、神の名前を唱えることができないのですから、神を恨んでのろうこともできないでしょう。ですから、陰府では、死者の意識がないことを示唆しています。
聖書は陰府では神のみ名を唱えたり神に感謝できないと述べている
地獄では人の意識があるとされているので神をのろったり助けを求めたりして神のみ名を唱えることができるでしょう
そして、BibleHubの27冊の聖書では、多くの聖書が、そのヘブライ語のシェオルの部分を、英語でsheolと音訳していたり、the grave、つまり墓と訳したりしています。ですから、ヘブライ語のシェオルを墓という訳語で訳すこともできます。
Bible Hub では、Berean Study Bible で、詩編6編5節のfrom Sheol?の部分は、
בִּ֝שְׁא֗וֹל (biš・’ō・wl)
Strong's Hebrew 7585: Underworld (place to which people descend at death) となっています。
ですから、シェオルには、人を火で責め苦に遭わせる地獄という意味はありません。火の燃える地獄は、死者の意識があって始めて責め苦を与え続けることができます。しかし、この詩編6編6節では死者の意識がなくなっていることを示唆しています。
エホバ神は、愛の神ですから、たとえ、人が邪悪なことを行なったとしても、火の燃える地獄で永遠に責めさいなむような方ではありません。しかし、エホバ神は、確かに生殺与奪の権を持っておられます。ですから、エホバ神は、邪悪な者を復活させることなく、単に存在しなくなるようにすることによって、邪悪な人々を裁かれます。エホバ神は人間世界に地獄を創造されませんでした。